31の節 英文和訳調
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作成日時 : 2005/09/12 00:21
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■英文和訳の落し子■
外国語、とくに英語が日本語に及ぼす影響は、カタカナ語の氾濫にとどまらなかった。その一つに予想外のものがあったことが分かる。すなわち、中高校での英語の授業の過程で生徒たちの体にしみついたのは、英語そのものではなく英文和訳調の日本語の言い回し方だった。
その代表例の一つに「・・・することによって・・・することができる」という何とも不器用、不恰好を絵に描いたような言い方がある。いく世代にもわたって日本人が受け継ぎ発達させてきた日本語はそのようなものではなかった。はるかに響きがよく滑らかだった。上に挙げた言い回しを本来の日本語の姿で言い替えてみれば、「(こう)すれば、うまく解決できる」、「(こう)すれば、もっと沢山手に入る」という風になろう。
「することによって」と「することができる」は、それぞれ単独ででも若年者が頻繁に使う大好きな言い方であるのは、つとに周知の事実だ。
前者の「することによって」には、変種として「することで」があり、少しニュアンスが違うかも知れないが「ということで」というのもある。年配者の世代では、これらは「・・して」、「・・で」、「・・すれば」、「・・すると」、「・・ので」、「・・なので」、「・・するために」、「・・したために」などと簡潔に言い、豊かに使い分ける。思い上がった現代の若年者は、言葉すら大人から学ぼうとしない。
注目したいのは、ここに列挙した中に「・・して」と「・・すれば」が同列に並んでいることである。NHKのある番組で聞いた語りすら、この両者に替えて「・・することで」だけで通していた。これからの日本人にまともな分析能力が育っていくのだろうか。マジで心配してしまう。
ここで少し例を示してみよう。
「家事をしっかりやることでも、・・・することができる」(と、アナウンサー。NHK)。「やっても」の方がずっと分かりやすく耳にも快いと思うのだが。
「洗濯に使うことで、嫌な匂いを発生させない」(日テレ、「おもいっきりテレビ」)。「洗濯に使えば」の意味だと知るまでに、ちょっと時間がかかってしまった。
「避難勧告ということで発令させていただきました」(と、新潟水害時の消防署の責任者)。まるで人ごとのように聞こえる。
「辛そうだという事で、何とかしてあげたい・・・」。「辛そうなので」という表現すら消えかかっているのかと、危機感を覚えてしまう。
「配管を寄せることで、キッチンはこんなに広くなります」。かつては、「寄せれば」と聞けば、配管工の言いたいことはすんなりと耳に入ったものだが。
「・・・することができる」は、英文和訳の影響というより、自国語、すなわち日本語の助動詞を使いこなす自信のない若者たちが窮余の一策として頼るようになった言い方にほかならない。
もちろん、動詞や助動詞の語尾の変化というものがない英語の影響も決して見過ごすことはできない。そのような英語の助け船にすがり寄らない手はなかった。こうして彼らは「することができる」という長たらしく不器用な言い方を重宝している。四方八方から聞こえてくるのは、いつも「・・・することができる」である。
「子供たちはまだ歩くことができる様子で・・・」(NHK)。「まだ歩けるようで」となめらかに正統な日本語が出てくるようになる言葉の躾ができていない。だから、「・・が分かる」も、「・・・を知ることができる」などと、ぎこちない言葉しか使えない。
「・・・に欠かせないものは・・・」も、彼らの手にかかると「・・・に欠かすことのできないものは・・・」と、まだるっこい表現になってしまう。
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